いつ死んでもよいと思ってはいるが、テロと戦争が始まったので、世界人類の帰越と日本国民の使命と責任を明らかに立証するまでは死ねなくなった。
然し生死は仏のおんいのちである。人間のはからいを離れ、念のためここに遺言を記しておく。

この地蔵真言は生涯の誓願であり、「我は仏にならずとも　生きとし生けるもの　みなをもらさず救い助けんと　誓う心ぞ備なる」の修証義の一節こそ、愚僧の人生を貫く一念であった。

祖国日本を愛し、道元禅師の仏道を修証し、「観無常心は発菩提心なり」の慈訓を体し、布施　愛　語　利行　同事の四摂法を日々につとめ、「己未だ 渡らざる先に一切衆生を渡さんことを」自らの戒律とし、常に機悔しつつ下根の過ちを仏前に謝し、自らの罪障を今にして尚お許び申し、いささかの善行をもってゆるしいただきたく念ずるものである。従って葬儀は密葬とし近親法類によりとり行わるべく、後日楽しいおっしゃんと子どもの会をつつましく盛大に開き、全人類の子どもの幸せを願っている野僧の祈りを共にして、円福友の会の「世界の円満と人類の福祉のために」の 誓いを受けついでもらいたい。ここにこの遺言を書けるに至ったのは、生涯の大恩師　大聖法親薫美師の御導きを賜り得、門人の末弟としてお仕えし得た乾抽一擲の宿縁を今生にめぐり会い、またみ俳のはからいであることを思うと、有難きこと感恩無量である。今日九十二歳の世壽を拝したるはこの戦争とテロの事態に、世紀が行き詰まり必然にして普遍旦つ妥当なる人類が人類をしての愛と責任によって地上に敵なき世界一家の創造を果たさねばならぬために、師が血と汗と涙の生涯を尽くされて予言された「世界法民宣言」と「新日本基礎法三章」を世に現わす天命をこの魯鈍の法子幸邦に命じおかれし事と確信し、「至らざるに非ず　誠たらざるなり」と戒められた師のお叱りを、この人生の教に栗して師のおんもとに報告申し上げなければ死んでも死にきれぬのであります。九十二歳に至って潮く天命を知りました。師示さる「天は自ら助くるものを助け、人は自ら信ずるものを信ずる」と、戦争とテロで殺しあって平和が達成できるか。協調和合し助け合って平和を達成するのか。この子どもでもわかる設問を全人類の大人に問うものである。師目く「荘厳なるものは最も簡単なものである」と。問題はやるかやらぬかである。このとき新日本国民に科せられた使命と責任こそ人類の運命を決する。戦争放棄の精神に立ち上る、ナショナリズムの世紀を超えた地球生命一体観にめざめた世界法民なる 新日本国民の愛と責任の実践無くしては、人類は救えないのである。

師は「太陽に帰れ」と命じられた日本国民は 、全人類を差別なく愛してやまぬ母なる太陽精神を日章国旗に高くかかげ、世界最初の戦争放棄国民として世界一家達成の将来をめざし、勇猛適進しなければならないのである。畏友法兄望月重信法子は、自分が戦死したら突撃の歌を歌ってくれと弟の私に命じて比島に散った。今こそその後につづいて突撃するときが来たのである。何ぞ便便と生命を長らうべきや。ここに遺言を記し新日本国民運動に向かって永遠に出発するものである。

この遺言を仏前にささげ、人間のはからいを離れ遵守せらるべし。

以上
平成十四年元旦
法子幸邦
法親薰美師