2016年4月
区長さんMr.Khiev Rithyphoin氏
プレイクチェイ小学校について、たくさん話しかけてくれたのが区長さんMr.Khiev Rithyphoin氏だった。校舎の建て替えについて、関係者を指揮してすべてを仕切っているように見えた。カンボジアの行政単位では村の上位に区がある。プレイクチェイ小学校はプレイクチェイ村、タプル小学校はタプル村にあり、両村ともSnay AnhChit Commune,に属する。きっと、このコミューンの長なのだろう。
背丈は私より少し小さかったのだが、お腹が出ていて、堂々たる体躯であった。円福友の会建設校舎の教室を使った会議では、私の座る場所を最上位に指定してくれた。そして、彼は私の左側に座った。『今日は大変忙しい日で、たくさんの仕事があったのだが、円福友の会の藤本氏が来てくれると言うので、万障差し繰って参加した』と話した。実際に、区の職員が、私のわきに座っている彼のところへ文書をもってきてサインをしてもらっていた。私も『今日は、わざわざ遠い日本から来た。』と話すと、笑いが起きた。
話し合いの中で、キムさんが『円福友の会はエコ村で井戸の寄贈をしている。』と話したらしくて、それを聞いた区長さんが、ぜひとも私たちに井戸二本を寄付してもらえないか、大変困っているので、是非お願いしたい。そう言うので、校舎と井戸とどちらがほしいのですか、と聞くと両方だと言う。あまりに困っている様子なので、現場を見に行くことにした。
その場所は、プレイクチェイ小学校の前の舗装された広い道から、非舗装の狭い道を数キロ程入ったところだった。車の中で聞くと、この一帯は高台にあるので水利が悪い。だから、乾季にはお米は取れない。水もない。5月までの乾季は始まったばかりなのに、周囲の田畑の植物は黄色になっていた。小さな池(写真)に水を汲みに来ている人がいた。
区長さんは地域の人を良く知っていて、だれにも声をかける。お子さんは元気、おばあちゃんはどう、こんな風に会話しているように見えた。
ポリタンクに汲んだ水は、洗濯や洗い物に使うという。飲み水は井戸のある家にもらいに行くという。あるいは、購入する。
ずいぶん奥に入った。ここからは車で行けないので、バイクで行くと言う。バイクが来ると、後ろに乗れと言う。さあ、腕はどうしたらいいだろう。まごまごしていると、私の腕をもって彼の太い腹に巻き付けた。出発。なんと、田んぼのあぜ道を走っていく。よくもまあ、こんな細い道をバイクの二人乗りで行くもんだと驚く。区長さんは平気で、あぜ道から集落の中に入ると、だれにでも声をかける。「こんにちは」「元気でやっている」とでも言っているのだろうか。すると、おばあちゃんも、おじいさんも、若い衆も、負けずと大きな声であいさつを交わす。私まで心がほのぼのとしてしまった。
やっと目的地に着いた。ここに一本お願い、と言う。ここに井戸ができれば、周囲の家族が井戸を使える。少し離れた家々を指さした。
私が、それでは井戸を寄贈しましょう、そう言うと出てきた人々が口々に合掌して『オークン』『オークン』と言うのだった。
この区長さんなら、信頼できるのではないか。そう思った。