円福友の会~世界なかよしのボランティア~

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2015年2月

大人も子供も教え合い学び合う小学校農園を支援しよう

円福友の会顧問 吉田恒昭

円福井戸設置予定のミトさんとソファット氏
円福井戸設置予定のミトさんとソファット氏(ミトさんは3か月前に国境警備中の地雷事故で左足首を失ってしまいました)

円福友の会が支援しているエコ村(カンボジア政府が願いを込めて名付けた通称)のナチュラル小学校の周辺地区には、タイとの国境を守る兵士や地雷除去に携わる人たちの家族が暮らしています。兵士の月給は$137(約1万5千円)です。彼らは月に一度くらい前線国境からエコ村の家族に数日間戻ります。子沢山の彼らの生活は極めて厳しいものです。この村には水道も電気もありません。水は雨水と沼水に依存しており乾季には水を業者から購入しなければなりません。その費用だけでも毎週$5にも達してしまうのだそうです。この金額$5は近くの町(スラエム)で働く場合の婦女子の日給に相当します。円福の読者の皆さんには既にお知らせの通り、円福友の会は昨年から深井戸設置を優先的に支援しています。『水あるところに仏あり』のキャッチフレーズの下で、『円福』読者の方々から浄財がたくさん集まり、これまで4基が建設され、今年は7基設置を準備中です。有難いことです。

シエム・リアップ在住で、現地エコ村にしばしば出向いて村人の相談役を担っている円福友の会契約の現地パートナーのソファットさんは、井戸設置支援を予定している7家族のプロファイルを報告してくれました。ほとんどの夫婦は読み書きが出来ず、家計は厳しく出稼ぎを余儀なくされ、空腹を満たす食糧さえもしばしば不足し、作物が採れない時期や病気になると高利貸しに頼らざるを得ない彼らの現実が見えてきました。この村が出来たのは数年前で、伝統的なコミュニティがなく隣人同士の仲間意識が欠如していることは大きな課題です。

円福井戸で兄弟水浴び
円福井戸で兄弟水浴び

1970年代半ばから数年に渡ったポルポト時代の200万人とも言われている大虐殺の後遺症で最も深刻なのが、隣人親族そして家族の絆さえも破滅させた密告制度と強制労働が横行する共同体組織によってもたらされた隣人相互不信と共同作業への恐怖嫌悪です。このトラウマは恐怖の時代を経験した大人が共有していると言われています。加えて、ポルポト時代以降の数十年に渡る内戦で教育を受ける機会がなく、大人の識字率が子供のそれよりも低いという現実がエコ村にはあるのです。エコ村はポルポトの墓が数十キロ西にあることから分かるように、ポルポトとその軍隊が最後まで支配した地域にあります。これらの重篤な後遺症は深刻で、自立した村づくり人づくりの基本である信頼に基づく相互扶助・共助意識が村人の間でなかなか育たないのです。

しかし、ソファットさんがエコ村を訪ねると村人達は競って寝床と食べ物を無償で提供してくれ、円福友の会への感謝を述べるそうです。友の会が寄贈した小学校と農家の井戸には、近所から水汲みに集まる隣人同士が交流を始めています。子供達はあちこちの井戸で水浴びに興じています。村を一回りして気が付くことは作物が見事に生育している農家と貧弱な作物しか見当たらない家族の違いです。読み書きが出来ないことと組織的な営農指導が欠如しているために、農作業の知識と技術の伝搬がなかなか進まないのです。昨年井戸を設置したホーンさん家族は水が自由に使えるようになったので、作物栽培を始めましたがとても難しいとつぶやいていました。

このような状況を踏まえて、小生と藤本住職は円福友の会として何が支援できるかを何度も電話で話し合いました。電話会談は多くの場合夜になりますので、藤本住職はほろ酔い気分で気も大きくなり、大いに気炎をお上げなります。さすがに人生を若者と児童の教育一筋に歩んだお方です、課題の核心を問い、そして解決策を提案してくれます。二人で合意した基本路線は『エコ村の人たちがこぞって緊急に必要で彼らが自主的に考え村人同士が協働で実行できる範囲の事業(プロジェクト)で、最初の数年間は円福友の会が支援するが、我々が手を引いた後も、彼ら自身で自律的持続的に発展が可能になるようなプロジェクトを支援する』でした。そして、そのプロジェクトの案は以下のようなものです。

先ずは、ソファットさんと彼の少年時代の友人でもある小学校校校長のサロンさんが主役で、彼を助けるスエ代用教員、そして字は読めないけれどいつも進んでソファットさんに寄り添い現場で手伝いを申し出てくれる若者のアン君たちが中心となって、ナチュラル小学校の裏庭に1反歩(50m×20m=1,000m2)ほどの試験農園を整備してくれることになりました。小学校の敷地は1.5haもあるそうです。この農園にはヤギ小屋、養鶏小屋も建ちます。農園のコンセプトはエコ村の名称に相応しい有機循環型農法普及です。そして4年前から循環型有機農法を導入して大成功を収めている女性篤農家のドイソックさん(2013年11月の第1回円福ツアーが訪問した農家で、もぎ立ての美味しいパパイヤやバナナをご馳走になりました)とマオさんに農業指導の先生になってもらうべくお願いしましたところ、二人とも『これまでの皆さんからの支援の恩返しです』と快くこれを受け入れてくれました。

藤本住職とドイソクさん
藤本住職とドイソクさん
吉田とマオさん(右)
吉田とマオさん(右)

そこで、今年は村人同士が小学校先生・児童と共に『教え合い学び合う学校農園の誕生』を目指すことにし、今年10月予定の円福友の会ツアーまでに開設することにしたいと思います。児童達もこのプロジェクトの主役です。幸いなことに小学校は2部授業ですから、児童が篤農家や先生と共に実技を覚えるのには好都合です。彼らが自宅に帰って家族とともに実施することになります。カンボジア語で書かれた堆肥・液肥普及や養鶏のための教材もカンボジアNGOのCEDACから譲り受けて児童家族達に配布します。

円福友の会が支援しているナチュラル小学校の隣で、エコ村の入り口付近に位置する小学校があります。私は2011年に東京倶楽部の助成金を得てこの小学校児童に対して植樹、校内美化運動、森林教育などを支援しました。わずか1年間の活動でしたが、子供達の姿はとても印象的でした。その一部が以下の写真です。児童は先生と一緒にいつの間にか野菜園で農作業をしていました。ゴミ拾い清掃も行っていました。驚いたことに便所掃除まで児童が行っておりました。エコ村の児童達が持つ大いなる可能性に感激したことを鮮明に覚えています。彼らの心はまっさらなスポンジのようで、教えは素直に心に沁み込み、体が動くのです。今こそ価値ある教育が必要と感じたことでした。この小学校農園プロジェクトも実践教育を経て、彼らの生活改善に直接役立つと共に、教育の本質に迫り、コミュニティ・エンパワーメント(村の人材と資源を最大限活用して村のパワーを起動させる=村おこし)に大きく貢献することを願っています。皆様のご支援をお願い致します。

野菜栽培を始めた児童
野菜栽培を始めた児童
校庭を清掃する児童
校庭を清掃する児童
便所清掃の児童
便所清掃の児童

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