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2014年11月

「水ある処に仏あり」・エコ村に井戸を!

円福寺住職 藤本光世+友の会顧問・東大名誉教授 吉田恒昭

今年も昨年と同様に十数名の仲間と共にカンボジアの通称エコ村を訪れました。エコ村とは世界文化遺産プレアビヒア寺院から南に十数キロの地区に新しく造成された村です。居住者の多くは、寺院がユネスコの世界文化遺産に登録されるのに伴って強制的に移住を余儀なくされた寺院周辺に住んでいた約千家族です。現在では彼らに加えて国境警備の兵隊や地雷除去に務める職員の家族も住んでいます。移住に際して彼らには電気も水道もない原野に一家族0.5haの土地とわずかな移転費用と家屋建設の木材が与えられましたが、驚くことに井戸は設置されませんでした。

このエコ村の小学校児童や農民に対して、円福友の会は現地友人とエコ村のリーダーと相談して、彼らが一番必要としている生活用水の確保をすべく深井戸(深度約30メートル)を重点的に支援してきています。これまで合計4基寄贈しました。

移住が始まった2011年頃からユネスコやNGOのわずかな支援で井戸が掘られ始めましたが、未だに十数軒に一基程度しかありません。住民は仕方なく雨季には屋根から落ちる雨水を貯め、乾季には近くの沼や小川から水を運び(写真①)、大きな瓶に貯蔵します(写真②)。従って生活用水は非衛生的で、水が原因の感染症が体力のない乳児や児童を苦しめます。眼病が多いのも水不足の村に住む子供達の特徴です。

① 沼までの水汲みは重労働です
① 沼までの水汲みは重労働です
② 濁った沼の水を家の瓶に貯めます
② 濁った沼の水を家の瓶に貯めます

これまで円福友の会の支援で設置された場所は村人の心の拠り所のお寺(パゴダ)、小学校、そして働き者の寡婦家族2軒です。小学校の井戸では児童が感激して満面の笑みを浮かべ利用しています(写真③)。乾季には近所の農家の子供たちがこの井戸まで自転車で水を汲みに来ていました(写真④)。

③ 小学校に寄贈された井戸
③ 小学校に寄贈された井戸
④ 近所の子供が学校まで水汲みに
④ 近所の子供が学校まで水汲みに

④ ポーンさん家族と井戸寄贈会員
⑤ ポーンさん家族と井戸寄贈会員

今年の訪問時に寄贈したポーンフェンさんの家族は弟が国境警備の兵隊で彼のわずかな手当で一家の生計を維持しています。家族は設置された井戸に大喜びで(写真⑤)、早速裏庭に作物を植え始めました。

もう一人の寡婦農家のホン・ノルさんの井戸では子供が大喜びで水浴びをしています(写真⑥)、野菜の灌水にも早速使われて家計と栄養補給を助けています(写真⑦)。近所の家族とも水を分け合っており、隣人との絆が生まれつつあります。

⑥ 小学校に寄贈された井戸
⑥ 小学校に寄贈された井戸
⑦ 近所の子供が学校まで水汲みに
⑦ 近所の子供が学校まで水汲みに

このように井戸の水は生活用水として住民の健康と生活改善に加えて食糧確保にも貢献しますし、児童を水汲みの重労働から解放して教育の機会を増やします。つまり、エコ村では井戸水が『人間の安全保障(健康・栄養・教育・生産)』の根源に寄与していることが良く理解できます。加えて井戸水を近隣と分け合うことで隣人との絆が生まれ、信頼と共助精神が育まれ、健全なコミュニティの形成にも大きな役割を果たします。

この村の成人のほとんどはポルポト時代(1970年代後半から80年代)に若年時代を過ごした世代で教育を受ける機会が全くなく読み書きがほとんど出来ず、土地にしがみついて生きるしかすべを知りません。小学校での教育も満足に受けられずに成人する若者は、男子は兵隊かタイへ単純労務の出稼ぎ、女子は都会の未熟練労働者として村を出ていきます。そこでの稼ぎでここに留まる家族・子供を支えています。未来を背負う子供が重労働の水汲みから解放され、健康を維持し、健全なコミュニティが形成されるためにも井戸設置を支援したいものです。

この地区は北の山脈に降る雨が地下30メートル付近の帯水層に豊富に貯留されます。水質もこれまで問題となったことはありません。

⑧ ホンノルさん家族と祠と円福ロゴ看板
⑧ ホンノルさん家族と祠と円福ロゴ看板

これまで述べてきた水がもつ多様な機能こそが『水ある処に仏あり』と言わしめるのです。人々の命を繋げるものであり、仏の心を醸成するものなのです。ホンノルさん家族の井戸の写真⑧はこれを示しています。写真の右に写っている看板には円福友の会のロゴで『地球みんなで幸せになろう』が書かれています。中央にはカンボジアの人々が信仰する仏様を祀る日本の神棚のような祠堂が家族の手で祀ってあるのが見てとれます。

エコ村の井戸造りにご協力をお願い申し上げます。

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