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2016年5月

紙芝居 エコ村ナチュラル小学校 教え合い学び合う学校農園

この紙芝居が制作された経緯について

これからご紹介する紙芝居は、円福友の会が毎年グループツアーを組んで訪問しているカンボジア北西部に位置するエコ村のナチュラル小学校の児童と村人達のために作られました。この村の北方約20キロのタイとの国境山脈断崖上には、約千年前に建造されたヒンズー教と仏教が融合した石造寺院があります。それは天空の寺院とも言われて、今でも多くの仏教信者の巡礼参拝の地です。この寺院はカンボジアではアンコール・ワットに続いて2008年に世界文化遺産に登録されました。遺産登録に伴って寺院周辺で森林を切り開いて生計を立てていた約1,000家族の人々は約20キロ南方の地点に造成された通称エコ村に移住を余儀なくされました。各家族は0.5haの土地と家屋建設のための資材とわずかばかりの現金を支給されました。この移住を余儀なくされた家族に加えて、国境を警備する兵士たちの家族や地雷除去に携わる人達の家族も移住し、現在では約2,000家族ぐらいが厳しい条件の下で生計を立てています。

エコ村が造成された地域周辺の県は河川や湖沼もなく昔からカンボジアでも最も貧しい地域です。カンボジアでは1960年代後半から東西冷戦構造の間で30年近く内戦が続きました。このエコ村がある地域は、内戦中にポルポト政権と軍隊が最後まで抵抗を続けたところに近く、地雷が多くて内戦終戦後も開発が最も遅れた地域です。もちろん未だに電気も水道も灌漑施設もありません。多くの農民家族は自給自足に努めながら家族の一員が都会や軍隊に出稼ぎをしないと生計を維持できないのです。エコ村の成人のほとんどは長く続いた内戦の影響で教育を受ける機会が全くありませんでした。実際、円福友の会が井戸(深さ約30メートル)を寄贈したナチュラル小学校周辺農家8軒の成人は誰一人読み書きが出来ません。彼らの多くはポルポト軍の兵士として内戦を戦い続けてきたことで、少なからず心に傷を持つ人々が多いと言われています。村落共同体としての最も深刻な課題は互助精神の欠如です。ポルポト政権の支配下で、多くの名もなき人々は生き延びるために親類や家族さえも密告して殺戮に加担したとも言われています。このような体験や噂話がトラウマになって、村の人々は隣人とともに相談し、助け合って生計を営むことを極端に避ける傾向が強いのです。

このようなことを踏まえて、円福友の会のエコ村支援は、先ずは人間の安全保障としての不可欠な食糧確保と命を繋ぐ“水の確保”、さらに初等教育支援、そして、生計自立の農業支援を目指しています。そして、これらの支援を出来るかぎり自助共助精神を強化する手段を用いて行うことを心がけています。具体的には、エコ村のナチュラル小学校近辺で食糧の自給自足を達成し市場へ作物を供給し始めている意欲的な篤農家を選んで農法改善を現地NGOの指導を得て実施しつつ、灌水にも使える深井戸を寄贈し、彼らが乾季でも作物を栽培できるように支援しています。これまで有機農法を実践して成功している3軒の篤農家を“先生”として、より現地に適した効果的な農法を普及させるために、ナチュラル小学校の空き地に農園を作ることにしました。児童や先生たちは既に約0.2haの農園を整備して一部2野菜と果樹の栽培を始めています。先生方の要望で数か月以内に追加的な井戸を学校農園に2本掘る予定になっています。

この現在進行中のナチュラル小学校の先生や村人の自主自立的な意気込みを踏まえて、エコ村児童達のみならず村人成人をも対象に、ここに紹介する紙芝居が作られました。つまり、円福友の会が支援する“教え合い学び合う学校農園”の目的や農業技術の基本を学んでほしいとの願いです。

紙芝居の制作を直接担当したのは東京都豊島区の“区民ひろば千早”にある『NPO法人はばたけ千早』の語り部部会の皆様方で、とりわけ16枚の絵は別所弘一さんが、ナレーションは斉藤康芳さんが担当しました。この紙芝居は去る2月に千早小学校の6年生を対象にエコ村の多くの写真と共に日本語で上演されました。児童達の多くは、カンボジアの子供達が貧しさの中でも明るく元気で生き生きと学び遊ぶ姿に感動したようです。そして自分たちの恵まれた生活や学校の環境に改めて感謝し、世のため人のために一所懸命勉強したいなどと感想文をしたためてくれました。後日、児童達は中古の綺麗な靴を百数十足集めてカンボジアに送り届けて欲しいとの願いを申し出てきました。円福友の会が実施している恒例のエコ村訪問の際に現地に運ぶ予定です。カンボジアでの国際協力活動であるエコ村支援活動が足元の日本で、図らずも日本の児童の心に響く“成果”をもたらしたとも言えるでしょう。

前置きが長くなってしまいました。紙芝居の中に出てくる日本語表示は全て現地ではクメール語に翻訳されて上演されます。言うまでもありませんが、電気がなく映画もテレビもない貧しいエコ村では、紙芝居は娯楽と教育効果絶大な優れたツールなのです。それでは紙芝居を始めます。

紙芝居“みんなの学校農園”の上演

紙芝居 ページ①

① この紙芝居のタイトルは“みんなの学校農園”です。作ってくれたのは日本の東京に住んでいて、カンボジアが大好きでお話し作りが得意なボランティアのおじいさん方です。毎年、私たちの小学校を訪ねてくる円福友の会も協力しました。

紙芝居 ページ②

② この絵は私たちの村から見える景色みたいですね。北に見える山々の頂には、私たちクメール民族が千年前に造った世界文化遺産プレアビヒア寺院があります。皆は参道入り口の有名な第5楼門を知っていますね!

紙芝居 ページ③

③ そう、これが第5楼門で、紙幣の2000リエルの裏側に描かれていますね。寺院本堂がある断崖から見下ろす麓は、緑がモザイク状に広がる森林平原で世界的にも貴重な自然遺産です。この寺院から約15キロ南に私たちのエコ村があります。

紙芝居 ページ④

④ 雨季が始まる6月になると、毎日のように雨が激しく降り、乾いて3いた小さな川がいたるところに現れ、沼ができて水が溢れ、地上は草木が一斉に芽吹いて、緑に色づきます。

紙芝居 ページ⑤

⑤ 雨で潤った水田に稲の苗を植えます。地上に溢れた水は地下にゆっくりと浸透し、井戸水の源となります。このように、私たちは、大いなる自然の循環の恵みの中で生きているのです。

紙芝居 ページ⑥

⑥ もう一つ、大切なことを学びましょう。森の草木、稲、畑の野菜、果樹などの植物が成長できるのは、太陽の光と空気中の炭酸ガスと水、そして土に含まれる養分を吸収するからです。そして、これらの植物を食べて命を繋ぐのが動物たちと私達人間です。でも植物も動物も生き物はいずれ死にます。動物の排泄物や死体、枯れ木や枯葉などは地表に落ちて土の中のミミズや微生物によって分解されて土の養分となります。この土の養分が再び吸収されて植物を成長させるのです。これを“食物連鎖”と呼びます。私達人間の命も、私たちを取り巻く自然の命と繋がり、循環しているのです。

紙芝居 ページ⑦

⑦ さて、この食物連鎖と命の循環の法則を理解した上で、どうしたら、作物を沢山作ることができるのでしょうか?エコ村には太陽の光も空気も土地もあります。そして、円福友の会の支援で井戸水も使えるようになってきました。ですから、良い土づくりができれば、作物が沢山できるはずです。良い土とは沢山の養分が含まれている土のことです。養分は植物の根から葉まで吸い上げられ、そこで太陽の光と空気中の炭酸ガスに出会うと光合成という現象が起こり、花が咲き実をつけるのです。自然の力というのは偉大で不可思議です。

紙芝居 ページ⑧

⑧ 養分を沢山含む良い土はどうしたら作れるのでしょうか?良い土作りには良い堆肥作りが必要です。堆肥は身近にあるものでお金をかけずに作ることができます。エコ村には雑草が至る所で繁っています。これらを刈り取って、細かく刻んでから一か所に積み上げます。その際に、米ぬか、薪や炭の灰、もみ殻、細かく切った稲わら、残飯などを混ぜるとより良い堆肥が出来ます。

紙芝居 ページ⑨

⑨ もう一つの方法の方法は、穴を掘って堆肥を作る方法です。穴は縦横1メートルぐらいで、深さは0.5メートル程度です。この穴の中に上で述べたような堆肥になる材料を埋め込みますが、この際に米ぬかを沢山入れるととても良い堆肥になることが分かっています。是非とも試して下さい。

紙芝居 ページ⑩

⑩ 良い堆肥を作りには牛や鶏の糞を良く発酵させて、植物の堆肥に混ぜると養分の多い堆肥が出来ますので、牛糞や鶏糞は大切に堆肥の材料に使いましょう。

紙芝居 ページ⑪

⑪ 幸いにもエコ村にはドイ・ソックおばさん、マオおじさん、フィーお姉さんのように堆肥と野菜作りの名人がいますから、彼らに教えてもらい、エコ村に適した堆肥作りに挑戦してみよう。堆肥ができたら、それを畑の土に混ぜ込み、1週間ぐらい過ぎたら、種を蒔いたり苗を植えたりします。

紙芝居 ページ⑫

⑫ ところが、野菜作りを邪魔するものがいるのです。それは作物を食べてしまう害虫です。仲間同志で虫取り競争をやって害虫を退治したり、害虫を寄せ付けないハーブを作物の間に植えこんだりすれば害虫の被害を少なくできます。エコ村のハーブ作りの名人は誰だったかな?どんな仕事も一人でするよりも仲間と一緒に助け合いながら大勢でやると仕事がはかどり、楽しいものです。

紙芝居 ページ⑬

⑬ ソファットおじさんの指導を受けて、学校の先生や村のリーダー達と良く相談しながら、皆で“教え合い学び合う学校農園”を大切に育てよう。もちろん、農業名人のドイ・ソックさんやマオさん達からも教えてもらおう。お互いに協力し助け合うことがとても大切なのです。

紙芝居 ページ⑭

⑭ この学校農園で“農民の日・品評会”という特別な日を設けてはどうだろう。皆が自慢の作物を持ち寄って、お互いに教え合い学び合うとともに、作物の優劣を参加者の投票で審査するという“品評会”を行ってはどうだろうか。立派な作物を作った人には賞状・メダル・賞品などが授与されます。大切なことは、エコ村に適した作物作りを皆で考え実践することです。このように農民の日・品評会などを通して村人達のみんながお互いに仲良く協力しあう気持ちが生まれれば村はきっと発展してゆくでしょう。

紙芝居 ページ⑮

⑮ 何事も最初は苦労が多いものです。諦めないで努力を続ければ、必ず良い結果が結びつきます。村の農業名人のドイ・ソックさん、マオさん達を見習って実践すればきっと沢山の作物を市場に出荷できるようになります。纏めて出荷すればシエム・リエップの市場で売ることも夢ではありません。今までのように、乾季になるとタイから作物を輸入することも必要ではなくなるでしょう。

紙芝居 ページ⑯

⑯ 作物が沢山収穫できて市場で売れれば、収入が増えて、皆が小学校に通えるようになり、中学、高校へも進学できるようになるでしょう。おそらく大学進学も夢ではありません。作物作りを通して、村の皆がお互いに教え合い学び合って、助け合いながら努力を続ければ、村の未来は開けてくるはずです。皆の学校農園がその第一歩になれるよう、ソファットおじさんやサロン校長先生達の指導を得ながら皆の力で大切に育てていこう。おわり

上演終了後の児童への質問(案)

(1)何が一番心に残ったかを聞く、そして、その理由を尋ねる。
(2)自然の循環とはどういうことか?
(3)食物連鎖とは何か?
(4)仏さまの教えと重なるところはどこか?
(5)光合成とは何か?
(6)良い堆肥の作り方を述べよ。
(7)エコ村ではどうしたら良い作物の作り方を学べるのか?
(8)良い作物造りで皆がお互いに協力できることは何か?
(9)エコ村で描ける夢と希望はどんなことか?
(10)その他、先生方が考える質問と解答

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